
変身
更新日:05.06.19 |
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2003年5月15日/第12回
悪徳バイト
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なにげなく新聞の求人広告欄を見ていたらこんな広告が出ていた。
『短期アルバイト募集』
着物のショールームのお手伝いです。
期間 5/23.24.25の3日間
10:00〜18:00
給与 3日間で34000円+ボーナス有り
年令 18歳〜70歳
★簡単なお仕事です!!
★まずはお電話03-3◯◯◯-□□□□までお気軽に!!
予定もお金も無い私は早速「お気軽に」電話をかけて面接会場へ足を運んだ。日本橋にある小さなビルの面接会場には私の他に4人のパッとしない中年のおばさん達が集まっていた。伊良部似の担当者が仕事内容について簡単に説明を始め、その後一人ずつ面接をした。なんのことはないこの会社は着物の悪徳業者だった。
仕事は簡単、まず採用されたら自分の知り合い10人に『招待状』なるものを送り、当日来た知人に着物を勧める。知人がだれも来てくれなかった場合は出勤とみなされず給料は出ないということだった。
つまり自分の知り合い10人の住所をこの会社に売り、来てくれた知り合いにこの会社の社員と一緒に寄ってたかって着物を買ってくれと勧めないと給料が出ないということだ。誰がやるんだそんな仕事! しかも肝心の「招待状を送った知人が来てくれないと給料が出ない」という部分は個人の面接で私が質問して初めて聞かされた(伊良部似の担当はかなり挙動不信)。
私は丁重に断わってビルを出たのだが、他の人がどうするのか気になってビルの外で待ち伏せしてみた。どうせ誰もやらないだろうが…。やがて先程面接を待っていたおばさんが出てきたので駆け寄って声をかけ「どうします?あの仕事やりますか?」と聞いてみた。前歯が三本しかないそのおばさんはやる気マンマンで「やるだけやってみます!」と言うでは無いか…。
事実を聞かされて無いのか? 次に出てきた品のあるおばさんにも声をかけてみた、こちらもやる気マンマンである。本人の勝手だと思ったがそれとなく「でも招待した人が来てくれないと給料出ないっていうのは辛いですよね〜」と言ってみると、おばさんは「え!そんなことないでしょう?そんなのタダ働きじゃないの!あなたの勘違いよ〜、大丈夫よ電話して聞いてみたら?」と全く事実を聞かされていない御様子。私は「そうですね…」とだけ言っておばさんと別れたがとても嫌な気分になった。
帰り道に立ち寄ったとんかつやで「私の損害は今日の交通費くらいで済んだけど、あのおばさん達はこれからの交通費と招待状の切手代、それにヘタしたら友達まで失ってしまうのかな…」などと考えながらカツ丼をかっこんだ。
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